私が愛した外国語話者 vol.4 〜坂本哲夢〜

坂本哲夢(さかもとてつむ)

 

ほぼ99%の方がピンと来ません。自分も久しぶり過ぎて名前を思い出せませんでした。

 

それなら、映画はどうでしょう。

 

柳楽優弥クンが主演した「星になった少年」。そのモデルが彼です。

           引用:映画ナタリー

 

できれば、原作「ちび象ランディと星になった少年」も読んでほしいのですが、ここでは割愛。ザックリと半生のみを記します。

 

坂本哲夢クンの半生

・動物プロダクションを手掛ける一家に生まれる

・そこで象と出会う

・優しい象に感化されタイへの留学を決意

・一年半の留学を経て象使いとして帰国

・交通事故でこの世を去る(享年20才)

 

あまりにも短い人生でしたが、彼の抜きん出た才能は、正に「天賦の才」としか言いようがありませんでした。

 

その一つがタイ語

哲夢にとって本格的な留学になったタイでの一年半はあっという間だったという。 言葉にしても、タイに滞在するようになって半年が過ぎた頃にはぺらぺらになり、現地にガールフレンドを作るほどに上達した。タイ語が話せるようになれば、ゾウたちの習性、世話、調教、そして医学的なことまで、わからないことをすべてタイ語で質問できる。

引用:坂本小百合「ちび象ランディと星になった少年

 

一般に言語の難易度は母国語との距離で決まりますが(語族や語派など)、タイ語と日本語の距離はムチヤクチャ離れすぎ。

 

文字も発音も難易度ウルトラC

      引用:ニューエクスプレス+(プラス)タイ語

 

そんな未知の言語を話す未知の国で「ガールフレンドができた」と言うのは、日常会話は全く問題ないレベルにまで到達した!と言うこと。

 

さらに通常5年かかる象使いの修行も1年でマスター、帰国後もタイ人とのコミュニケーションには、一切困らなかったそう。

日常会話には困ることのない哲夢のタイ語能力は、この頃から飼育場にいる動物の世話とゾウの調教のために雇い始めていたタイ人スタッフとのコミュニケーションにも大いに役立った。

引用:坂本小百合「ちび象ランディと星になった少年

 

どんな外国語もそうですが、一年やそこらで修得するのは、ほぼ不可能。よっぽど単語や文法が似通っているならまだしも(英語↔ドイツ語など)、日本語からタイ語を短期間で身につけるのは異常です。

 

その秘密の一端は不思議な能力がルーツかも。

(中略)俺は動物の仕草や表情で、ある程度は彼らの気持ちがわかるんだけど、動物の声を聞いたのはあれが初めてだったんだ。聞き覚えがないんだけど、安心感が溢れ出てくるようなミッキーの声、それに戸惑っていたんだよ。

引用:坂本小百合「ちび象ランディと星になった少年

 

動物の声を聞いた」と言うのは、仕草から必死にメッセージを読み取ろうとした結果、それが声になって聞こえたのでしょう。

 

恐らく彼のタイ語学習を加速させたのも、人や動物を問わず、言葉の通じない相手と心を通わせたいと言う、優しいマインドのなせる業。きっとそうに違いありません。

 

坂本哲夢。

 

天才象使いにして、偉大なるタイ語マスター。

 

「あまりにも早すぎる」と言う言葉では追いつけないほど、彼は足早に人生を駆け抜けたのでした。

 

   大人気だった「ぞうさんショー」で司会を務める坂本哲夢

    引用:坂本小百合「ちび象ランディと星になった少年